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本の紹介 『日本人の英語』

日本人の英語(マーク・ピーターセン著)

こんにちは。夫です。

今回は、英語学習者なら一読の価値ありの岩波新書『日本人の英語』を紹介します。

アメリカ人著者が日・英の違いから見た日本人英語の特徴を分析し解決策を提示してくれる岩波新書のベストセラーです。

基本情報

書 名:日本人の英語

著 者:マーク・ピーターセン

出版社:岩波書店 

発売日:1988/4/20

内容

著者のマーク・ピーターセンさんはアメリカ出身。英米文学と日本文学を専攻し、来日後は日本の大学で教鞭をとられています。

英語と日本語の双方に精通している著者が、双方の語学感覚のずれから生じる間違いを指摘し解決策を提示してくれます。初版は約30年前になりますが、今日でも多くの本屋さんの棚に並んでいるのは名著の証でしょう。なお、『続 日本人の英語』『実践 日本人の英語』などの続編もあります。 

いくつかこの本の中から、目からウロコだと思ったポイントを紹介します。

1.「a に名詞をつける」と考える

多くの日本人は、まずは表現対象の名詞を頭に考えて、それが可算名詞か不可算名詞か、単数か複数かといったことを考えて、その後に冠詞”a”をつけるかどうかを考えていると思います。例えば、”This is a pen.” という英文を考えるときに、まず名詞の”pen”を考えにおいて、それが可算名詞で単数なので”a”をつける、という風に考えるのではないでしょうか。

しかし著者によれば、ネイティブの発想ではそれは逆だというのです。

ネイティブ・スピーカーにとって、「名詞に a をつける」という表現は無意味である。英語で話すとき ―ものを書くときも、考えるときも― 先行して意味的カテゴリを決めるのは名詞でなく、 a  の有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で表現すれば、「a に名詞をつける」としかいいようがない
(本書より引用。太字強調は夫による)

ネイティブの考え方では、まず、伝えたいものが一つの決まった形のあるものなのか、複数なのか、決まった形のないものなのか、といった意味的カテゴリーが先にきて、冠詞を選択し、その後で適切な名詞を当てはめるという順序のようです。

本書の中の例では、

Last night, I ate a chicken in the backyard.

という文について、本当は「鶏肉を食べた」という文にしたかったのに、”a” があるために、

「昨夜、鶏を一羽(捕まえて、そのまま)裏庭で食べ(てしまっ)た。」

と読まざるをえないと指摘がされています。

たしかに、鶏肉を食べたという場合の「種類としての鶏肉(チキン)」は冠詞”a”は付けずに”chicken”と書くのが正しいのですが、あらためて考えてみると、たった一文字の”a”の有無でまったく意味が異なることに驚かされます。著者が、冠詞は名詞につくアクセサリーのようなものではなく、先行して意味的カテゴリーを決めるものだと言うのは、まさにその通りですね。

ちなみに"a chicken"と"chicken"をそれぞれ画像検索してみた結果が次の2つの画像です。その違いは歴然ですね!

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"a chicken"の画像検索結果(Google)

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"chicken"の画像検索結果(Google)

2.冷蔵庫と電子レンジ

「冷蔵庫に入れる」は"Put it in the freezer"なのに、「電子レンジに入れる」は"Put it in my(his/her) microwave oven"となることについて、著者は、

なぜ microwave oven の場合は her microwave というのに、冷蔵庫の場合は her ではなく、the freezer というかは、純然たる意識の問題である。具体的にいうと、冷蔵庫というものは、どの家庭にでもあるというふうに意識されるが、電子レンジはまだ普及していない。どの家にでも当然電子レンジがあるという意識は、近い将来にできるかもしれないが、今はまだない。その冷蔵庫との意識の違いを herと the の使い分けで表現する

(本書より引用。太字強調は夫による)

と説明しています。

このような、”the”を使うか所有格を使うかという使い分けによっても、表現力と正確さが出てくるため注意するとよいとのこと。

現在では出版時と状況が異なり、電子レンジも普通はどの家庭にもあるため、冷蔵庫と電子レンジの例は適切ではないかもしれません。しかし、その趣旨は現在も妥当するでしょう。

3.「ナツメ・ソウセキ」でよい

日本人の名前を英語で表現するとき、名前を前にして、名字を後ろにするのが普通と考えていないでしょうか。ところが、著者によるとそれはおかしいことのようです。

私は、アメリカの大学院で日本近代文学を専攻したが、皮肉なことに「ソウセキ・ナツメ」という言い方を初めて聞いたのは、日本に来てからであった。実は、そういわれても、しばらくは誰のことをいっているかぴんとこなかった。アメリカのニュースでは中国人や韓国人の名前は、Mao Tse Tung(毛沢東)とか、Kim Dae Jung(金大中)といっているのであって、決してTse Tung Mao とか、Dae Jung Kim とはいわない。ところが、日本人の名前になると、おかしなことに Yasuhiro Nakasone とか Noboru Takeshita となってしまうのである。これは日本人自身が順序を逆さまにしてきたから、そうなっているにすぎないのである。

(本書より引用。太字強調は夫による)

この点については、最近は日本人の意識も変わってきている気がします。そういえば、TOEICのマークシートに名前を書くときも、LAST→FIRSTの順で名前を記入することになっていますよね。

しかし、日本で長年の間、英語の場合は名前を前にすることが当然のように教えられてきたのは不思議ですね。

ぜひ一読をおすすめします!

以上は本書の中からほんの少しの紹介をしたものですが、これ以外にも多くの鋭い指摘がユーモアたっぷりに書かれています。英語ネイティブはこう考えているというのを、日本文学を専攻して研究するほどに精通する人が書いている本というのはかなり貴重なのではないでしょうか。

ネイティブに近い英語の考え方を身に着けることは、TOEICのリーディングにもきっと役に立つはずですよ。